大変お待たせいたしました。
読者の皆さまからの強いご要望にお応えし、このたび「わが心の師、谷口与鹿と一緒に眺めた情景」と題するインターネット写真展を開催いたします。
日本三大美祭のひとつ高山祭の屋台彫刻に数々の名作を残した稀代の天才彫り師の生誕200周年記念出版「谷口与鹿」に続く特別企画展です。
ファインダーを覗く写真家の胸を激しく揺さぶった劇的なシーンを集めましたので、あえて景色や光景ではなく「情景」というタイトルにいたしました。
生まれてからずっと故郷で暮らしてきた百歳の「飛騨びと」は私の写真に驚き「こんなの見たことも聞いたこともない」と微笑みながら目を細めました。
かねてから「国際観光都市」を目指してきた飛騨高山には、いま海外から大勢の観光客が押し寄せ、さまざまな観光スポットでは空前の活況を呈しています。
しかし物事には「光」と「影」があります。
予期せぬ混雑は地元で暮らす人たちの平穏な生活を乱し、ゴミのポイ捨て、騒音、さらにはスマホを片手に私有地への無断侵入など市民の平和な日常にも影を落としはじめました。
「旅の恥は掻き捨て」という言葉のように、やはり旅先では開放的になり、ついつい気が緩むのかもしれません。
近ごろは空き缶、ペットボトル、買い物袋など本来ならば山や川にはないはずのゴミが至るところに散乱し、観光地としての見た目の悪さも静かに同時進行しています。
このまま「オーバーツーリズム(観光公害)」の悪影響を克服できなければ、いずれは観光地としての顧客満足度の低下につながる危険とも隣り合わせです。
地元の雇用を支え、経済を潤す観光業の恩恵は誰の目にも明らかですが、観光客とは無関係な人たちの快適な生活も維持できないと反発を招きかねません。調子に乗っていると、とんだしっぺ返しが待っているかもしれないのです。
「国際観光都市」として大きな飛躍と成功を収めた飛騨高山の真価が問われるのは、むしろこれから・・・。今こそ、絶妙なバランス感覚が求められるのではないでしょうか。
写真家 柳 沢 雅 彦